今、哲学が流行っている。本屋の哲学コーナーに行けば、入門書から専門書までがずらりと並び、とっつきやすいものとしては、超訳したものや、図解したもの、漫画にしたもの…などがある。
教育分野を覗けば、「子どものための哲学」も盛んだ。とはいえ、子どもだけではない。カフェでは「哲学カフェ」が、まちでは市民講座として「哲学対話」が開催されることも増えている。
一方、哲学をビジネスに活用する動きもある。海外では、哲学的な知見や思考法をビジネスや組織経営に導入していく哲学コンサルティング企業が生まれ、GoogleやAppleなどが「哲学者」をフルタイムで雇用している例もある。哲学の知恵をビジネスに転用し、仕事上の困りごとを解決しようという狙いだ。
兎にも角にも、「哲学」というものが以前に比べて、より親しみやすく、より身近なものになってきている。おそらくは、答えのない、先の見えない、不確実性の高い時代だからこそ、なのだろう。
哲学に何らかの「答え」のようなものを見つけたい、そういう気持ちもあるのだろう。しかし、ここであえて言いたいが、哲学は答えではない。単なる都合のいい知的生産技術でもない。哲学は、実践に生きてこそ、のものだ。哲学の知識をただ知っていて、昔の哲学者がこう言っているんだから…という言葉に何の力があるというのだろうか。
哲学は、常に誰かの哲学であり、それはその時代のその一人の実際の生き方と不可分だ。その哲学を、私たちが実際に生きてこそ、自身の現場で実践してこそ、その哲学は輝きを放つ。その意味で哲学は、答えをくれる教科書でも、単にこの時代の問題解決に役立つ技術というわけでもないのだ。むしろそれは深く、私たちの生き方そのものに関わってくる。
とすると、日常生活の中で、あるいは仕事の中で、私たちとは時代背景の違う哲学者たちの思考はいかに実践されうるのだろうか。哲学と実践、あるいは、哲学とわたしたちとの関係はいかなるものなのだろうか。本イベントでは、その手がかりをともに探っていけたらと思います。
はじめに、博士課程で哲学研究をしながら、哲学研究者として企業の監査役や個人クライアントの相談役を務める佐々木晃也から、「ドゥルーズにおけるスピノザ〜実践とは何か〜」の話を共有します。
そのあと、哲学を学びながら、フリーランスでワークショップデザイナー/ファシリテーターをしている古瀬正也から、「フッサールの現象学的還元〜ワークショップに現象学を活かす〜」の話を共有します。
続いて、二人によるクロストーク、小グループにおける感想共有と意見交換、全体セッション…という流れで、進んでいく予定です。
テーマに関心ある方はもちろんのこと、実践に哲学を活かしたい方、哲学はいかに実践しうるかをともに探究したい方、また、本イベントに関心のある方であれば、どなたでもお待ちしております。
当日、皆さんに(オンライン上ではありますが)お会いできることを楽しみにしております。