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「風越コラボ」キックオフイベントのレポート

2018年4月28日(土)は、軽井沢風越学園設立準備財団主催の「風越コラボ」キックオフイベントのワークショップデザインとファシリテーターを務めさせていただきました。

会場は、東京都立多摩図書館のセミナールーム。

会場には、受付、荷物置き場、おすすめ図書コーナーを設置。

おすすめ図書コーナーでは、参加者の皆さんに実践のヒントにされている本やお気に入りの本をお持ちいただき、置いてもらいました。

(→風越スタッフのえみさんが花を飾ってくれていました。こういう小さな心遣いこそが、温かみのある場を作るのだと思います)

(→ちなみに、私が置いた1冊は『教育思想史』でした)

10:05、開始予定より少し遅れての開始。

ファシリテーターの私から口火を切り、まずは挨拶と簡単な自己紹介。そして、本日の「場の前提」をお伝えしました。

「場の前提」の確認は、当日の場の「チューニング」のようなもの。

告知文でも趣旨は伝えていますが、全員が全員それを熟読しているとは限りません。だからこそ、「こっちは、このつもりで場を開いている」と再度伝えて、その場で共通了解をつくることが大切になります。

また、その場で同じ「ビジョン」をみることも大切です。

風越コラボは、それぞれの教育現場の実践知を持ち寄り共に探究し合う場。
そのことをこの図で表現しました。

ちなみに、ここでいう「教育現場」とは、必ずしも学校や教室だけのことではありません。

私たちは社会生活の中で、時折「教え・育てる立場」になることもあれば、逆に「教えられ・育てられる立場」になることもあります。ですから、「教え・育てる」という教育的要素は、職場、地域、家庭…日常の中でさえも、ありとあらゆる場面に〈潜んでいる〉と言えます。

つまり、誰もが何らかの「教育現場」に属し存在している。

「今日はその足元の自分の現場を感じながら、そこでの実践や知恵を持ち寄ってもらいたい」そんな想いをこの図に込めたのでした。

まさに、多様な人が集まって試行錯誤しながら実験する場。
それが「風越コラボ」の目的(ねらい)でした。

また、今回は、ドキュメンタリー映画『Most Likely To Succeed』を一緒に観るという目的もあったので、キックオフの目的は以下のような文言となったのでした。

全体スケジュールは以下の通り。午前に映画『Most Lilely To Succeed』を観て、午後に対話の時間、そして、ふりかえり。(盛りだくさんの一日です)

さて、チェックインが終わると、続いて、理事の苫野一徳さんから「自由と自由の相互承認」について、副理事長の岩瀬直樹さんから「原理と実践の往還」についてお話いただきました。

苫野さんのお話は通常であれば、何時間もかけて聴くような内容。しかし、今回はそれを聴くことが目的ではないため、たったの7分でお話してもらったのでした。

お話は「およそ1万年前…」から始まったので、1万年の時間がぎゅっと7分間に圧縮されていたのだと思います。(※詳しく知りたい方は、著書『教育の力』をおすすめします)

そのあとは、3人1組で自己紹介。以下4つの項目をもとに3人で10分間、お互いのことを知る時間をつくりました。

たった数分間でも一声発することには、意味があります。

「声(こえ)」は「(私を)超(こえ)えていく」から「こえ」なのだと昔調べたこともありますが、私という存在を声に乗せて、私を飛ばす。その声が相手に届く。と同時に、私も「私の声」を聴く・・・

そうやってお互いの「声(という存在)」を飛ばし合いながら、お互いの存在の輪郭をはっきりさせて、その存在を承認し合い、結果として、安心感を生み出していくのかもしれません。

いよいよ、映画上映の時間。

上映前には「なぜ、この映画をみんなと一緒に観たかったのか?」について岩瀬さんから少しお話いただき、それから映画上映となりました。

(→実際の作品は日本語字幕つきです)

映画は約90分間。米国のカリフォルニア州にある「High Tech High」というチャータースクールを描いた作品です。

私の率直な感想を言えば、「食い入るような90分間」でした。

印象的な場面はたくさんありましたが、その一つが「最初の授業の場面」です。

不安そうに教室に集まる生徒たち。先生が教室に入ってくる。入るやいな「ソクラテス式セミナーをするぞ!」と先生は言い、教室のレイアウトを描いた紙だけを置いて、部屋から出ていってしまう。生徒は戸惑う。その様子を見かねて、再び先生がやってくる。「線が机で、×(マーク)が椅子だ。みんなで教室をつくりなさい」と追加の指示を出す。生徒たちは動き出し、自分で自分たちの教室をしつらえていった・・・

自分で考えさせ、選ばせ、行動させる。
判断力は、判断することで培われる。

この学校では「知識の詰め込み」ではなく、あくまでも何らかのプロジェクトを達成するために知識を学び、それを最終的に表現する。テストの代わりが、プロジェクトの展示会であり、発表会でした。

もちろん、こうしたアプローチがゆえに、例えば、難しい数学の公式を覚え損ねて卒業してしまうこともしばし起こるのだとか。

しかし、その批判に対しての先生の言葉はとても爽快なものでした。

「詰め込みで覚えさせられた知識は、大人になれば大半忘れてしまっている。そもそも忘れてしまうのならば、何を失ったというのだろうか。それならば、もっと身につく知恵の方がよっぽど重要ではないか。」(※古瀬の記憶による要約)

非常に衝撃的かつ刺激的な映画でした。(まだまだ書き残したい気持ちもありますが、「まだ前半」なので、先に進むことにします)

映画の後は、1時間のお昼休憩をとり、対話の時間(ワールド・カフェ)へと移っていきました。

(→トーキング・オブジェクトは、前日に近所の鎌倉の浜辺で拾ってきて洗浄した石。その他にも、おもちゃの木や入浴用の丸い木などを使いました)

ちなみに、私は10年ほどワールド・カフェの実践と研究をしてきましたが、10年経っても色褪せない面白みを感じています。

最近では「ワークショップは、主催者側の導入部分で全ては決まるのではないか」と思うくらい、導入部分が重要であることを感じているので、今回のワールド・カフェについても随分と考え直しました。

特に今回用に更新したのが、「カフェの前提」と「カフェ・エチケット(心構え)」です。

ワールド・カフェの提唱者のアニータとデイビッドの翻訳本にも、この前提は(表現は違えども)明確に書いており、10年越しにやっと自分の言葉でまとめることができたのでした。

この「集合的な知恵は、既に存在している」という前提は、「貢献する意志」を生み出すと私は考えています。

なぜならば、必要な知恵は「既に存在している」のですから、今は〈まだ〉アクセスできていなくとも、いずれは「アクセスできる」という可能性に開かれています。そして、その「アクセスの仕方」こそが、それぞれの知恵を惜しみなく出し合い「貢献し合う」ことなのです。

となると、次に気になるのは「どう貢献できるか?」でしょう。

そこで、具体的な「貢献の仕方」の提案として、今回は「3つのプロセス」をお伝えしました。

(→このイメージは、立教大学の中原淳先生の『対話とは「意見をポットンと落とすこと」!?』の影響が大きい)

図を見たり、話を聴くと、「そりゃそうだ、当然だ」という声も聴こえてきそうですが、その当然こそが「言うは易く行うは難し」なのです。

だからこそ、「今一度これを大切にしましょう!」と呼びかけ、再確認する。それが「カフェの前提」であり、「カフェの心構え」となります。

この2つの「心構え」は当然と言えば、当然。しかし、頭ばかりで思考してしまい、感じていることを疎かにしてしまうことはよくあることです。

私のもとには常に何らかの「感覚」「感情」「思考」が訪れては去り流れていますが、いま感じている限りにおいては、誰がなんと言おうとも、それはその人にとっての事実です。

良い悪いの判断以前に「そう感じてしまっている私」がいる。その事実をまずは受け止めた上で対話していくこと。それが大切です。

そして、それは相手も同じです。そのお互いの「感じていること」を大切にしながら共に探究していくことがワールド・カフェにおけるマナー、エチケット、心構えになります。(そして、このことはまさに「自由と自由の相互承認」を実現するための重要なことでもあるのだと思います)

導入の最後では、「道具の使い方と終わりの合図」の説明をして、それから「本日の問い」の発表に入っていきました。

今回の問いは、風越学園にとって「最も問いたい問い」。そして、皆さんと「一緒に探究していきたい問い」でもありました。

文字だけで見ると抽象的に感じられるかもしれません。ですが、風越学園が目指している理念を知っている人、また、この場で「自由と自由の相互承認」を聞いた人としては、全く違ったようにも響きます。

問いは、それまでの文脈があってこそ、初めてその場の人たちに届くものです。

ただし、問いの抽象度が高すぎると、どこから話しはじめれば良いかがわからない。それを懸念して、今回は補足の言葉を()で添えたのでした。

考えてみれば、この問いは異なる他者と共に生きていく上で決して避けて通れない、ある意味、全人類的な問いでもあるように思います。

私とあなたは違う。けれども一緒にいたい。一緒に生きていきたい。または一緒にいざるをえない。その時には、必ずやこの問いが根底に横たわっている、そう言ってもいいのかもしれません。

もちろん、唯一の固定的な答えはないでしょう。

しかし、いまここに集まっている一人一人の体験や知恵を持ち合わせることで、ある一定の「共通了解(集合知)」を見出すことは可能です。そして、それを促す「生命システム」こそが、ワールド・カフェに他なりません。

さて、今回のワールド・カフェの設計としては、各ラウンド25分、合計3ラウンド、最後は自分の席に戻る形式で行いました。

さらに、今回、特に実験的に取り組んだのが「ハーベスト(収穫)」の時間です。

小グループでの話し合い後、「個人のまとめ」として、問いについての自分なりの考えをA4白紙に書き出します。基本1つの事柄は1枚の紙に。複数可。

10分程「個人のまとめ」の時間をとり、頃合いをみてから、学びの「収穫場づくり」へと入っていきました。

全員で一斉に机を動かし、会場中央を開けてスペースを作ります。そして、自分の紙を置いていきます。

置いた人から小休憩に入り、その後は、いよいよワールド・カフェもクライマックス。全員での「学びの地図づくり」です。

ルールは、以下の2つ。

②を入れたのは、分類したり、カテゴライズしたりする際、自分の紙を勝手に動かされて、他の人のカテゴリーや価値観に押し込められることに窮屈さや抵抗感を感じるのではないかと懸念したからでした。

続いて、手順の説明。

そして、いよいよ「学びの地図づくり」のスタートです。

最初は様子を伺っている模様・・・

しかし、少し経つと「こっちに『対話』というキーワード集めています!」とか声を掛け合う動きが出てきて、ちょっとずつ場が活性化していきました。途中からマイク3本を自由に使えるようにし、さらに場は活性化していきます。

しばらくすると、素晴らしい提案も出てきました。

「まとめようとすると、②のルール(他人の紙を動かしてはいけない)を守るのが難しいので、なくしてほしい!」と。

これには驚きました。実は、ちょうど私自身も感じていたところだったからです。再び全体を見渡し、この場の意志を感じとり、結果、このルール②は撤廃することにしました。

この場にとっての不必要なルールがなくなった瞬間でした。

(まさにルールとは自ら変えていくものだなと感じました。また、映画を通して、主体的に動く生徒を見たばかりという影響もあったのかもしれません)

ただし、あのルールが全く無意味であったとは、私は思いません。一旦はルールとして敷いて、「ああ、確かに、誰かの枠組みに無理やり押し込められるのは嫌な時もあるな」と思ったのであれば、それはしっかりと心に残ったのではないでしょうか。

その上でルールが破られたわけですから、他の人の紙を移動させる際には少しの躊躇や配慮が生まれたのかもしれません。

(→ホワイトボードに全体の地図をまとめている人もいました)

およそ30分間。この「学びの地図づくり」の時間は続きました。

ある程度動きが落ち着いてきた段階で、最後の10分程はそれぞれのまとまりを作っていた中心人物や各部分を説明できる人に解説してもらって「全体シェア」となりました。

もちろんこれで全ての発見や気づきを収穫できたとは思いませんが、それでも可能な限りの収穫はできたのだと思います。

会の最後は、一人ひとりに「一日の振り返り」を紙に書き出してもらい、それをグループで共有し合い、副理事長の岩瀬さんの言葉をもって、この場は閉じられていきました。

終えてみて思うこと。それは、本当にあっという間の一日だったなぁということです。

特に印象深いのは、やっぱり「ハーベスト(収穫)の時間」で、100人の規模で一斉に「学びの地図づくり」を行うというのは、とてもダイナミックで、わくわくしました。

全ては予定不調和。何が起こるかはわからない。むしろ、場をつくっていくのは私たち一人ひとりの「行為」と「振る舞い」にかかっている。私の動きが他者に影響を与え、お互いに連関しながら場は進む…

その動きは、まるで一つの生命体のようでした。

著書の中でアニータとデイビッドが言っていたように、ワールド・カフェはやはり「深い生命システムのパターン」なのだと思います。

さて、「風越コラボ」のキックオフはひとまず幕を閉じましたが、この場がこれからどのように発展し、どのような「意味」をもたらしていくのかはまだ誰も知りえません。

ただ、いま一つだけ言えるとしたら、きっとこの場に参加した一人ひとりが「意味」をつくっていくのだということです。

そして、数年後か何十年後、蓋を開けてみた時、「あの場が始まりでしたね」と言い合える関係や未来が待っているのかもしれません。

そんな未来から力をもらいながら、私自身も次なる一歩を歩んでいこうと思います。

長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2018年5月2日
古瀬正也

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